SSブログ

油を使わない魚のフライ 【イタリア関連のはなし-8-】 [イタリア関連のはなし]

油を使わない魚のフライ 【イタリア関連のはなし-8-】
イタリア料理も北と南では異なる。私達が生活していた南ではパスタとオリーブ油がすべての料理に不可欠だ。北ではそれにバターとリソットが加わる。なかでもオリーブ油は日本の醬油に相当し,パスタ料理はもちろん、現地の人はパンも含め何にでもオリーブ油を付けたり掛けたりして美味しそうに食する。出張で日本から来た人のなかにはオリーブ油が苦手な人もいたが、さすがにその香りすらも嫌だというほどの人は多くはなかったが一人はいた。彼にとってのイタリア料理は、醬油なしの日本食みたいなもので、それなしの食べものはほとんどなく、彼の滞在期間じゅう気を遣ったが短期間だったので助かった。
それほどでなくても、ホテルに何ヶ月も滞在して日常に使う単語を覚える頃にはオリーブ独特の臭いが鼻について来る。パスタにオリーブ油が入っているのは美味しいが、黙っているとcameriere(ボーイ)がサラダや魚料理にもオイルをかけてもってくる。慣れるとそれも美味に思えるけれど、それを嫌う人もいる。その一人は、すぐに、"senza olio" (オリーブ油なし)という言い方を覚え、それをcameriereに連発するのが口癖になっていた。
ある日、いつものように夕食のために滞在していたホテルのレストランに彼も含め数人で行った。皆はもう慣れたもので、各人がイタリア語のメニューを見て好きなものを注文した。彼は "peshe furitta" と注文したあと、口癖になっていた"senza olio"と付け加えた。それを聞いてcameriereは一瞬けげんな顔をして、隣席の人との話に夢中な彼に "senza olio?"と確かめた。彼は話を中断されて不愉快とばかり "certo" (certainly)と答えた。cameriereは何ともいえない顔をしてもう一度同じことを訊ねたが、「何度聞くのか」とばかり彼が "certo!!"と大声で答えたのに困り果てたようすだ。彼は無意識に口から"senza olio"と出ただけで気づかないようだったが、彼がいっているのを続けると"Peshe furitta senza olio" 「つまり、油を使わない魚フライ」といっていることになる。そこで私が茶目っ気を起こしてcameriere に「 "pesce bollito" (boiled fish) のことだよ」というと「ああ、"pesce bolito" のことですか」と安心したような顔で私に確かめる。するとそれを傍で聞いた彼が、「井上さん、違いますよ。私は "pesce furitta" を頼んだのですよ、間違えないで下さい」と私に抗議してきた。そこで彼に「油なしで魚を揚げといわれれば煮るしかないではない?」というと、やっと本人もそれに気が付いて、"con olio!" (油で)と大声で訂正した。cameriereも、彼の口癖の "senza olio" がつい出てしまったのだと気付いたようで皆で大笑いをした。それを伝え聞いた会社での相棒のイタリア人の間では それ以来 "senza olio" が彼のあだ名となった。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。