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自動三輪車の免許証取得のはなし 【くるま関連のはなし-2-】 [くるま関連のはなし]

自動三輪車の免許証取得のはなし 【くるま関連のはなし-2-】
スクーターを売却したら郊外に行きたくなった。その頃、所得倍増計画が発表され経済は急成長期に入って皆の生活にも少し希望が見え始めた。軽自動車もその波に乗り、値段はまだ年収以上だったが40万円を大きく割り街でちらほら見かけ始め、なんとか買えそうとの展望が開け始めた。ともあれ運転免許だけは取っておこうと思った矢先の1961年春に、大型コンピュータが入り、プログラミングとテストのためにタイミング良く夜勤となり、会社を休まずに昼間の自動車教習所に通えるようになった。「チャンス逃すべからず」と教習所へ行こうと決めた。
当時、少し景気の良い魚屋さんや八百屋さんの仕入れや配達には、後ろに四角の荷台が付いた自転車型ハンドルの自動三輪車が使われていた。自動車教習所に行って調べると、丸ハンドル操作の必要な軽自動車免許は1ヶ月近く通う必要がある。しかし自動三輪車免許はハンドル操作が自転車と同じで、旨く行けば2週間でとれて講習料も安く、しかもそれで軽自動車も乗れるという。その免許をとろうと2週間分の実技だけの講習料を払った。
教習所では2週間先の受験を目標に10人ぐらいが一緒のクラスだった。ほとんど20歳前の若者で、「今朝出がけに社長から頑張って早ヨウ合格センバと言われタッサ」「おい(俺)もそうバイ」など九州弁が聞こえる。「若いのに社長から言葉をかけられるなんてすごい」と思ったら「免許バとったら仕入れに行かれるトバイ」という魚屋の兄ちゃんだった。
実技は三輪トラックの後部荷台に5人ずつ乗り、先生がまず自分でコースを一まわりして注意事項を教えることから始まった。この免許を選んだ主な理由はハンドル操作が自転車と同じで容易なことだが、問題は、いまの自動変速と違いクラッチ、それもダブルクラッチでの変速で、これは予想以上に難しかった。ダブルクラッチで変速するには、まず左ペダルを踏み込んでいる間にシフトレバーをニュートラルに入れてエンジンを車軸から切り離した後クラッチ踏み込みを戻す。その間に右ペダルのアクセルを徐々に踏み込んでエンジンの回転数を上げ、頃合いを見てクラッチを踏み込み、シフトを一つ早い位置に動かしクラッチを戻すと言うものだ。これがなかなか難しく、タイミングや回転数が合わないとギヤがガリガリ言うし、下手をするとエンストする。これに余分な気を取られると方向指示器を出しそびれる。出発時、信号待ちなどの度にそのクラッチ切り換えを低速から中速、高速と方向変換の信号を出し忘れないように注意しながら行うのは思ったよりも大変だ。方向変換や停止などは少し前に受けた2輪車の試験の経験が役立って余り苦労はしなかった。どうやら様になるのに一週間ほどを要した。
1週目の終わり頃、先生が皆に「来週月曜日に試験がある。君たちより1週間早い入学者が受けるので、少し早めに来て実技試験のようすを見るように。それと合格は無理と思うが井上君に度胸試しの受験をして貰うので参考にするように」、そして私にこっそり「皆がびびっているので悪いけれど年長の君が一回余分に受けてくれ」と言った。
実技試験は信号や一時停止、方向転換などは自動二輪と同じで、それに車庫入れが加わった。そのバックも自転車の要領で何とかなると思い、クラッチ操作とそれに続くスピードアップに留意することにした。自分の前の番で、後の荷台に乗って試験の様子を見ながら、二輪車の時と同じくどこでどう操作するかを身体に刻み込んだ。試験ではクラッチ操作に留意し、何とかエンストもせず終了した。結果は驚いたことになんと合格だった。先生も私が通るのは予想外だったらしく「君にはもう一週間、一緒の若い人たちを元気づけて貰おうと思ったのに」と残念がっていた。筆記試験は法規と構造でこれは問題なく通って免許があっという間に取れた。そうなるともっと後で買うつもりだった車が急に欲しくなってきた。

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