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スバル360の使い勝手 【くるまのはなし-4-】 [くるま関連のはなし]

スバル360の使い勝手 【くるまのはなし-4-】
1961年当時のこの車への満足度は、異質ではあるが、いま乗っているプリウスのそれと匹敵するほどだった。というのも、機械工学を学んで5年しか経っていなかった私は、次のような点に感銘を受けたからだ。すなわち、車体は、従来使われていた0.8ミリ厚の鋼薄板から、見るからにペコペコの0.6ミリ厚の鋼板に丸みを付す造形で強度を持たせた車枠のないモノコック構造とし、ルーフ材にはプラスティックを用いるなどで総重量385kgに納め、当時としては画期的な360ccの2気筒2サイクル空冷エンジンに、足回りは独立懸架サスペンションを採用し、車長3.6m、車幅1.2m、回転半径4mの小さいが悪路に耐える乗り心地を実現し、しかも何とか手の届きそうな値段に仕上げる設計だった点である。
でも、それなりの使い勝手の悪さが幾つかありそれに対処する工夫も必要だった。一つは燃料まわりのことである。燃料はガソリンと潤滑油の混合油でどこのスタンドでも売っていたので間違いなく指定さえすれば問題はなかった。しかし、メーターは速度計と積算距離計だけでガソリン表示計がなく確かに不便だった。それは安価に納めるための機構に理由もあったのだろう。ガソリンをエンジンに送るのにポンプではなくタンクの蓋に穴を開けてガソリンの重力による自然滴下方式をとっていた。したがってエンジンの始動前にシフトレバーの横の小さなガソリンレバーを一段だけ引っ張りタンクからのコックを開く必要があった。駐車の際にはエンジンを切った後でガソリンレバーを元の閉の位置に戻す。メーターがないのでガス欠のエンストを生じる恐れがあり、その場合はレバーを2段目まで引くとそれから数km走るだけのタンク底部のガソリンが滴下される仕組みだった。ガソリン残量は停車している時にタンクに付着した棒状のゲージ目盛りのどこまで濡れているかでわかる仕組みだが、走行中には見られないのは不便だった。しかし、ゲージを走行前に確認することと、給油時に18リッターの満タンにしてその時の積算距離を記録し、それまでの平均燃費をかけた走行距離から次の給油時の走行距離を予測計算して、その距離になったら満タンにし走行距離を記録することで、少々面倒だが、慣れれば余り困ることなく対処できた。その癖でいまの4代目プリウスまで記録をとり続けている。エンジンは2サイクルで点火位置がずれやすく、しかもそれで燃費が大きく変わるので、調整方法を整備工場で習って自分で頻繁に調整しリッター当たり20km弱に保てたように記憶する。
次ぎに厄介だったのはワイパーに注水機能がなかったことだ。当時は舗装工事がまだ進んでいなくほとんどの道が凸凹だったが、それは優れもの独立懸架のバネで徐行さえすれば車底をこすることなく対処できた。でも、八幡から福岡に行く国道3号線は当時工事中の箇所が多く、雨降りにでも運転すると対面から来るトラックの前輪が水溜まりに入りできる泥水を、1.3mしかないスバルの低い車体に「バッシャ」と掛けられ、前が全く見えなくなる。そうなると注水装置のないワイパーを使うほどに泥が広がって益々見えなくなる。最初は仕方なく路肩に待避し雨の中を降りて窓を拭いては走った。しかし「窮すれば通ず」で、次の雨降りの時からは濡れ雑巾を10枚くらい用意し、前が見えなくなると左手でハンドルを持ちながら、右の窓を全開しそこから右半身を乗り出し右手で素早く次々と手にした濡れ雑巾で拭くという連続技で何とか乗り切ることにした。いまでは信じられないが、半身を乗り出してフロントガラスの半分が拭えるほど車が小さかったということだ。
2ドアの窓ガラスは、いまのような上下でなく前後のスライド式でドアの内下側がその分広く取れ合理的だった。もちろんエアコンなど論外で、夏はドアの窓を後方に引いて開け、フロントガラスとの間にある三角窓をグイと押し角度を調節すれば、塵埃も入るのを我慢すると、冷風が顔に直接当たって心地よかった。冬は空冷エンジンなので空冷後の暖まった空気を室内に出して何とか温まった。このようなことを思い出すと、いまの自動エアコン、ナビなどの完備した車と比べて50年しか経ってないのに隔世の感がする。


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