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カタカナ文字 【言葉のはなし-2-】 [言葉のはなし]

カタカナ文字 【言葉のはなし-2-】
  最近は日常生活でカタカナ文字なしでは済まされない。記憶装置の単位などマイクロ、メガ、ギガなど日常の生活では遭遇しなかった微小・巨大な単位まで加わっているが、ここではカタカナ文字について書くことにする。
コンピュータ分野では、その生まれがアメリカであることから、当然ながらカタカナの大氾濫である。2000年頃に私が担当していたコンピュータ関連の授業でも、マウス・ドラグ・バイト等々多くの用語が英語であった。私には、カナ文字を見るとその元となった単語は何だったのかと考える癖がある。それに同じカタカナ文字でも、元となる英語ではマウス(mouse、mouth)、ドラグ(drag、drug)、バイト(byte、bite)などのように異なる。そのようなわけで、私の情報処理の授業では黒板にはカタカナは一切使わずにその元となった英単語で板書し、後で辞書を引くように学生には言っていた。私としてはコンピュータ分野のことと同時にせめて英単語も覚えて欲しいと思ってのことでもあったが、学生にはあまり評判が良くなかったらしい。たまには、私の意図に賛同する学生もいたが、多くからは「先生の授業では、英単語の板書が英語の授業よりも多い」といわれていたようだ。
  それにしても、2000年前後の自動車業界におけるカタカナ文字の氾濫は異常であったと思う。その頃、自動車を買い換えることになっていくつかの車種のパンフレットを見た。その印刷の綺麗なこともさることながら、なかにある説明文でのカタカナ文字の羅列には驚いた。予防安全という項目では、プロジェクタランプ、に始まって、フォグランプ、コーナーリングランプ等々ほぼ全項目がカタカナ文字である。多くは英語の単語に結び付け何を意味するかがわかったがチルトステアリングとなるとチルト?あtilt かと思いつくのに少し時間がかかった。フロントドアカーテシランプに至ってはしばらく考え込んでしまった。カー(車?)テシ(??)。写真をみて,どうやら前のドアをあけたらしばらくの間ドアの内側の足下を照らすランプらしいことがわかり、やっとcourtesyという単語に結び付けることができ納得できた。と同時に自動車会社の人が何と書くべきか悩んで結局カタカナ文字にしたのだろうと同情した。
  それと同時に、カタカナ文字のスペルが気になり始めたのがいつからだったのかを思い出した。昔、と言っても昭和32年(1957年)頃のことだった。当時私の勤務していた製鉄所に最新設備を持った厚板工場が建設されることなり、バンティングという現場経験の豊富なアメリカ人の技師が操業指導にやってきた。彼は圧延機やその付属設備の運転を教えに来たのだが本当に何でも良く知っているのには驚いた。新工場の稼働後に始まったトイレの改修まで彼の発想かと勘ぐられたほどだ。ある日、新工場のトイレ(当時は便所と言ったと思うが)改修が済んだというので行ってみた。全体が白く塗られ明るくなったのにも驚いたが、なかにある扉がすべて開いていて、その扉に庶務掛長(官営の名残で係長のことをそう書いた。知らない人はカケチョウってなんですかと聞いたものだ)名で「このトイレは〘ラバトリヒンジ〙方式という新式のもので、使用していないときには扉が開いているので閉まらなくても心配なく」といった趣旨の麗々しい張り紙がしてあった。いまの人は想像が付くかも知らないが、当時の私にはラバトリヒンジとは何のことなのか気になって密かに辞書を引いたがスペルがわからずなぞのままだった。
  その翌年アメリカに留学して"lavatory"とある所を覗いたら便所だった。また計装機器の授業で"hinge"と言うのが蝶番であることがわかったとき、それまで気になっていたラバトリヒンジとは便所の形式ではなくその扉の付け方のことだったのだと納得できた。きっと掛長さんも、いまとなっては元の英語までかの技師から聞いたのかつまびらかではないが、ハイカラぶったカタカナ文字を使って張り出したのだろう。そう思ったら、それまでのなぞ解きができてすっきりしたと同時に、その時以来カタカナ文字の元のスペル探しが癖になってしまった。また、コンピュータ分野でもカタカナ文字の元は英語とは限らないことも、マイクロフィシュ(Microfiche、fiche:仏語)などの例で知った。


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