SSブログ

焼夷弾と機銃掃射の被弾経験【この頃思うこと-43-】 [この頃思うこと]

焼夷弾と機銃掃射の被弾経験【この頃思うこと-43-】

 今年も8月を迎えた。終戦時には中学1年で武庫川のすぐ西側に住んでいた。7月頃から制空権はないも同然で毎晩のような空襲警報に起こされ、蚊帳も使えない防空壕に走り込むためにズボンの下脚部に脚絆を巻いたまま寝るようになっていた。8月に入って焼夷弾攻撃が、東の大阪からと西の神戸からの挟み打ちで夜ごとに段々と迫って来た。終戦の数日前の夜、例のごとく頭上にB29の爆音が近づいたが、その夜はいつもとは違いゴオーと言う投下音の後で焼夷弾の束をばらす炸裂音に続き、いまも耳元に残る「ヒュルヒュル」という焼夷弾一発一発の独特の降下音が次第に大きくなってはスット消えていった。その何十回目かに音が大きくなり消えないままドシンドシンと地面への落下音が庭の防空壕内に響いた。すぐ外に出ると家の玄関前に落下していた焼夷弾一つから飛び散った黄色の数センチの油脂の塊が庭のあちこちと玄関の戸や柱の10箇所くらいでチョロチョロと燃えている。当時はどの家にも玄関前に砂袋数個と防火用水、バケツ、天井裏にひっかかったものを落とす鳶口が用意されていたので、まず両手に砂袋を持ってまさに家に燃え移ろうとする黄色の油脂の火をゴリゴリと押して消したら油脂の塊が砂袋の中にグニャと残った。急いで家のまわりをみると門の外にもう一発火をばらまいていたが回りには類焼しそうにないのを確認し、急いで鳶口を持って家の中を一階の部屋と、二階では天井板は剥がして見えていた屋根裏に異常がないこと、とを確認して防空壕へ駆け戻った。その間もヒュルヒュル音が大きくなっては消える。それは頭上を通り過ぎたことを意味した。随分長い間のように思えたが直撃はその二発だけで済んだ。庭や門脇で燃えていた油脂も砂袋を押しつけて消した。翌朝すぐ西の武庫川土手を通ると川原と川の水中に焼夷弾が何百発と落ちていた。前夜はいつもより東風が強く家の一角を狙った焼夷弾が風に流されて西の川原に落ちたのだろう。次回こそは家の周辺の被弾だと覚悟していたら終戦となり幸運にも家は焼け残った。焼夷弾一発は径が10cm強の六角形、長さが50cmほどで、束からバラされて雨のように降ってくる。運悪く直撃を受けと即死するが小学校同級生にもその犠牲者が出た。余談だが散らばった油脂の燃え残りかすは、終戦後の燃料不足で縁遠かった風呂に少しずつくべて湯を沸かせ平和利用した。
 
  機銃掃射を被弾したのは中学からの帰路で阪神国道電車が空襲警報で運転休止した時だ。いざとなれば道の側溝へと思いながら安全な場所へと走っていたが、前方に何か不穏な気配がしてヒョッと目を上げると遙か向こう正面からこちらを向けて土煙をあげながら何かが急速に迫るのが見えた。グラマン戦闘機の掃射だと気付きとっさに側溝に転がり込むとすぐ横を機関銃の土煙が走りすぎた。まさに危機一髪で助かった。
 
これまで1トン爆弾の被爆(拙稿 http://inoueyoshisuke.blog.so-net.ne.jp/2011-11-05)や、堺の大空襲の経験を(http://inoueyoshisuke.blog.so-net.ne.jp/2012-03-01) 記したのに加え、鮮明ながら余り思い出したくないこの記憶を、体験者の伝承責任も感じて今回記述した。
  戦後70年間、近隣国とはその国内事情も絡み多くの難課題が残されてはいるが、日本では戦後ずっと平和が守れて来たことが極めて尊く、これからもそれを守り抜く決意と共に平和の重要さを、紛争の絶えない世界に訴えたいと被爆経験を綴りながら痛感している。


nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 1

勝田祐輔

 真に愚かな戦争であったと思います。昭和20年、我が家から3百メートルほどの近鉄 赤目口駅でB29の空襲があった。当時、3歳半だった。銀色の物体(戦闘機)が上空をかすめた。座敷に何枚ものお布団を被せられた。小学校の講堂に沢山の人が寝かされていたとのこと。
 国の指導者は、いったいどのような責任をとったのか? 日露戦争では日本が勝利したとされる戦争であるが、圧倒的な戦力の差で日本が勝ったというような状況ではなくて、最初から日本が良い条件に持っていけるようなところで戦いを終結するように目論まれていたとの説がある。どうやら太平洋戦争でも、根底には恐らく同様な考えがあったのではなかろうか?
by 勝田祐輔 (2015-08-31 11:21) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。