SSブログ

鉄棒の大車輪回転の理屈 【この頃思うこと-22-】 [この頃思うこと]

鉄棒の大車輪回転の理屈 【この頃思うこと-22-】
 体操男子の鉄棒テレビ観戦では、その流麗な回転や宙に舞う姿が理屈抜きに楽しめる。その「理屈抜き」の流麗さこそが点数の鍵となるが、それは「回転の理屈」に深く関わる。私は16歳まで鉄棒には無縁だったがそれから半年で大車輪が廻れるようになった。その私はテレビで躍動を見るとその各瞬間に身体の該当部分の筋肉に力が入る。そこで、それを思い浮かべ、後で学んだ力学の理屈に照らし記述すると、鉄棒に無縁な人にも大車輪の「回転の理屈」とそれの流麗さとの関連とが分かり易く記述できるのではないかと思い到った。
 高2の4月、大学受験組の友人達と体力作りで鉄棒を始めたが、懸垂1回できない「でくの坊」は私のみだった。悔しくて練習し、10日ほどで懸垂ができるようになると今度は鉄棒に取り付かれ、前廻り・蹴上がり・大振りと次々に大技へ挑んだ。夏休みには逆車輪と大車輪が廻れるようになり、その1949年度秋の県国体県予選に出場できた。必要な筋肉も逐次付き、身体で覚えたその感触は60数年経ったいまも残っている。肝心の受験勉強はそれで遅れ一浪したが、一生一度の成長期に虚弱な身体が柔軟・頑強になったのだから悔いはない。
 さて「回転の理屈」だが、大車輪も鉄棒を軸とした身体の回転運動で回転モーメントの原理に従う。つまり、回転を続けるには何らかの回転力をその運動体に補う必要がある。その外力は身体の落下で生じる重力を、体内の筋肉の瞬発力を出して鉄棒の撓い(しない)で生じる反力とタイミング良く合成して遠心力に変えることだ。それがうまく説明できれば、次に鉄棒下の静止状態にある身体を鉄棒の真上で倒立させるのは同じ理屈で説明できる。説明上はそれは後にして、私の身体の記憶を頼りに、まず倒立状態からの運動体として説明を始めるが、分かり易くするため説明では鉄棒の真横から見て身体が鉄棒を軸に時計廻りに廻ると考え、その身体の軸位置角度を時計の長針が指す時間の数字で表すこととする。
 鉄棒真上12時位置の倒立から、腕と背筋で突っ張って顎を上に上げて重心を背部に移動させると、鉄棒を軸に重力で身体全体が時計方向に廻り始める。2時前後の位置のとき、背を反らし始める感じで3時半頃一瞬力を抜くと身体が落下し4時半頃の位置で感じるその急激な腹背筋の反動に合わせ、5時頃の方角のとき腹筋と背筋の渾身の前方を蹴り、それと6時方向の少し前で生じる鉄棒の撓い反力とを加えて遠心力に変えると、両足首が11時方向に目がけ飛び出す感じになる。そこで胸を前に出すと胸が足に付いて行く感じで上がっていく。身体が11時過ぎくらいの角位置でスット手首の重力を感じなくなる瞬間があり、その瞬間を逃さず素早く手首をクルリと鉄棒の上に被さるように返すと、足首に続いて胸が上がり鉄棒の上での倒立姿勢へと戻る。これが大車輪が1回転する理屈だ。回転速度は足を蹴り出す反動の強さで決まる。習い初めは戻るのが怖く精一杯蹴り出すので回転が速すぎるなどぎこちなく見える。さりとて遅すぎると廻りが戻って落下する。その過程で安全な落下方法も体得する。練習で学ぶのはスムースで流麗な回転すなわち「回転の理屈」が見えないようにすることだ。
 演技初めの鉄棒下の静止状態から鉄棒の真上で倒立するまでの理屈もこれと同じだ。まず腕を曲げ背中を反らし力を抜いてストンと身体を落とすときに生じる鉄棒の撓う反力を利用し足首を蹴り上げるのは上述通りだ。蹴りが強ければ足首が11時方向まで上がり、そのまま重心を足先に置く感覚で時計と反対の左回転をする大振りの技で1時近くまで身体を上げれば、その後は上述の「回転の理屈」とつながる。初心者で蹴りが弱い場合は足首位置が9時くらいしか上がらないので蹴上がりし、そこから大きく反時計方向に反動を使い足を跳ねると1時くらいの姿勢になり回転へつながる。
 回転技を終えると着地となるが、今度は鉄棒を離れての宙返りで回転力を削ぐ以外は方法はない。身体が真下に来る瞬間に合わせ足首を11時方向に反動をつけ蹴上げて手を鉄棒から離し、1回転しかできなかった私にはわからないが、回転を複数回しかもかその間にひねり技を加えるには、滞空時間を長くするため反動がそれと目に見えるほど大きく勢いをつけ身体を可能な限り高くに蹴り放りあげる必要がある。その「蹴り」だけは強烈で、流麗さを保ったそれまでの回転時の「蹴り」の反動とは異質のものだ。次にテレビで見るときそれに留意したら、上述の「回転の理屈」と合わせて「その理屈と反動を見せない流麗さ」との関係が幾分でもより良く理解できるだろう。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。