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働くと言うこと【この頃思うこと-35-】 [この頃思うこと]

働くと言うこと【この頃思うこと-35-】
  先ごろ、YMCA山手学舎発足70周年の祝会で、その第一回卒業生として簡潔に乾杯の音頭をとるようにと依頼された。「YMCAの働きに乾杯で唱和をお願いします」だけでは余り素っ気ないのでYMCAの「働き」に関連し次のように付け加えた。
 「働く」と言う字は「人の横に動く」と描くがこれは「辻」と同じく中国にない和製漢字で人が動くのことであるが、ただアメーバーのように無意味に動き回るだけの意ではない。それは日本語の妙だが「働く」での動くは、その発音通り「傍(はた)の人を楽(らく)にさせる」ような人の動きのことなのだ、---と。
 これはまさにYMCAの働きとして言われる「キリスト教的な精神で社会に奉仕すること」に通じたとみえ参加者の多くがうなずき唱和してくれた。
 この「働き」は、ちょうど50年前になるが、幸運にも一年ほど一介の掛長として何人かの同僚とと共に資料配布や記録などで陪席していた八幡製鐵の経営会議で当時の稲山嘉寛社長から直接聞いた言葉の一つであった。
 稲山社長は後に新日鐵社長や日経連会長としても日本経済界を指導された人だが、会議ではポケットから小さなノートを取り出しては丹念にメモをとられ、必要に応じそれに目をやって自社や鉄鋼業界のみならず日本経済全般についてグローバルな視野から意見を述べられ、主要な場面で強い指導力を発揮されていたのが強く印象に残っている。
 稲山社長は演説調はあまりお得意ではなかったが少人数の会議ではにこやかにユーモアを交えて語られ、場の雰囲気を和らげられるタイプの話の名人でもあった。冒頭の「働く」もそうだが、ある時机上の資料を一瞥されて「ブカブカドンドン」と独りごとを言われ何事かと思っていた。会議が進み組織の議題になると「チンドン屋ではあるまいしこの頃は”部課・部課どんどん”と皆が言い組織が増え複雑になるが-----」と節を付けて面白く言われ皆がそのことだったのかと笑った場面も鮮明に覚えている。
 何回か続いた会議である重役に一つの大きな案件に関し強い反対意見を数回にわたり述べる機会を与えられ、それをどう決着されるのかと30歳そこそで下っ端の私ははらはらしながら傍聴していた。社長はその重役が意見を述べ尽くした所で、その重役に反対されていた立場で問題を解決するように任用されたのには驚いた。また、その重役も自分が述べた理由を反対していた立場から解決すべく大活躍されたのには感じ入った。
 「働く」ことが50年昔の稲山社長の人柄と仕事のなされ方につながり、あの世のどこかでさぞ苦笑されていることだろう

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