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「米食」と「肉食」考【この頃思うこと-3-】 [この頃思うこと]

「米食」と「肉食」考【この頃思うこと-3-】
いま住んでいる靜岡の街中でも、少し歩けば世界各国の料理専門店や同じ店で種々の国の料理が楽しめる。また、自宅でも和食と洋食との区別が薄れている。私自身も、70歳半ばまで仕事を続けたので運動不足の期間があり、血糖値を食事で管理するため一日の所要エネルギーを蛋白質・糖質・脂質のバランスよく摂取することに心掛ける身となった。「米食」とか「肉食」とか考えていたつい50年余り前には想像もできなかったことだ。
1956年の大学卒業時にはまだ米穀配給通帳が必要だった。配給米だけでは不足し、会社の独身寮では3交代勤務の労務加配米の「おこぼれ」で米飯だけは好きな量が食べられた。おかずも野菜の煮物と時々は鯨肉もあって戦時中の飢餓感とだけは無縁にはなっていた。そのような日本から、急に世界で最裕福な米国へ留学した。「もの」、とくに「食べ物」の豊富さや収入に比しての安価さには驚かされた。薬のように時たま飲んでいた牛乳は、その容器が日本の一瓶の数倍はある感じで、嬉しく水代わりにガブガブ飲んだ。すると、一月もしないうちに体重が増え、朝起きると身体中がギトギトとして、洋画にあったように朝のシャワーを浴びないと気持ちが悪いほどになり飲む量を控えた。また、当時の日本では、蛔虫の恐れから生野菜を食べる習慣がなかった。生の人参の入ったサラダに「ウサギの餌」を連想し、最初は嫌々ながら食べたが、慣れると大変旨い。「アメリカでは何が旨いと思うか」と友人に訊かれ、即座に “Fresh salad and ice-cream”と答えたときの友人が示した「期待はずれ」といった表情は忘れられない。とくにセロリはいまでも病み付きになっている。
その他 ” Milk Shake ”(ミルクセーキ)は一回で飲み切れないほどの量で甘く、大学のカフェテリアで昼食をそれで済ませたことも再々だった。クリーブランドでは中心部近くに黒人が住むようになり、金持ちが郊外に越した。そうして空いた大邸宅が学生向けのトイレ付き貸部屋となり、そこで多くの学生が自炊していた。「米飯」は恋しいが、炊飯に独特の臭いが伴うので、共同のキチンでは昼間誰もいないときを狙って時々こっそり炊いた。
家族の一員として一時期厄介になったボンド家で、「今日はYoshiのためポテト代わりにライスにした」と、ポロポロ米を煮て、皆はそれに砂糖をかけて食べ始めた。甘党の私もそれだけは勘弁願って塩を振りかけて食べ驚かれた。それと逆に、イタリア風の豆がいっぱい入ったスープはゼンザイに似ていて甘いものと思ったのに塩味で驚いたこともある。
また、「肉食」とは縁遠く「米食」で腹を充たしていた私には、「少量の肉と野菜料理、ジャガイモとサラダに牛乳」の夕食では物足りない顔をしたのだろう。食後私の表情を素早く読み取ったミセスボンドが ”Are you sill hungry ?” と訊いたのも無理はない。「カロリーは充分過ぎると思うが胃は満足していないようだ」と感じたままをいったら ”---???” と困った表情をされ、今度はこちらが返答に窮した。
授業で毎回出される課題に追われる留学生活では、夜の眠気と戦うのが一番辛かった。半年くらい経ったとき、ふと、「米食」をした晩は夜に無性に眠くなるのではないかと思いついた。すると、それがかなり当てはまると思えた。そこでエンジニアらしく考えたのは、「石炭を焚いて蒸気エネルギーに変えるボイラー効率は、焚く石炭の品質に左右され、同エネルギーを得るには無煙炭などの高級炭が泥炭などの低質炭より少量で済み高カロリーを出す」ことだった。胃も「食物を消化し脳の思考力や身体の運動エネルギーに変える」が、胃にとっては、同じ発生エネルギー量に対し、「米食」の方が「肉食」より消化に多くのエネルギーを要し(換言すれば熱効率が悪く)その分、頭への血流が少なく眠たくなるのではないかという理屈だ。日本人の腸の長さは西欧人のそれと比してそのために極めて長いとさえいわれていた頃だ(いまはどうなのだろう?)。それで、当時、日本人が電車の中で居眠りするのを外人が不思議がっていたことも納得できる気がした。その後、一年経って家内も留学して来たので、宿題の多い月曜から金曜日は一日交替で洋食風に「肉」とサラダ、パンの食事とし、土・日のどちらか副食を少なく「米飯」で腹一杯とする食事にして、その日だけは課題は忘れ早々と寝て留学時代を過ごした。この理屈の真偽のほどは不明だが、現在では電車でも居眠りが余り見られなく、老齢者が食後少し横になりたがるのはこれで説明が付きそうだ。最近では眠れないことはあっても眠くて我慢できないなどとは夢のまた夢だが----。この頃このようなことを考える人もそうはいないだろう。



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chiho

うちの子ども達の食生活にとても参考になりました!
by chiho (2012-01-20 08:08) 

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