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転職と会社へのLoyalty 【この頃思うこと-4-】 [この頃思うこと]

転職と会社へのLoyalty  【このごろ思うこと-4-】
   転職の考え方は社会風土や時代と共に変わる。時代での変化は、日本では経済が高度成長から安定成長への転換期である1980年後半に大きかったと思う。それ以前の大企業では、終身雇用で入社後何年かは同期入社は同額の低い給料で始まり、勤続年数と共に能力と貢献度の上昇するにつれ個人差はあるが年度ごとに昇給し、55歳の年満退職まで会社が社員の面倒を見ることがおおかった。しかし、同時代でも風土の違う米国では、「転職できるのは能力ある証拠だ」だとばかり、初任給が卒業成績で違うのを留学先で知見し、その時は彼らの会社へのLoyaty は何なのか明確には理解できなかった。
  入社後10ほど経ちCalifornia 大学Berkeleyでの一か月間ホテル泊まり込みのExecutiv 向けプログラムに出張参画した。50歳前後の米国内の社長と副社長を対象に、数十冊の経営、経済、歴史、人種差別、生化学など多分野の科書籍を課題で読ませ、社会的責任、企業の人材育成など、経営者として重要な多くの課題を学び討論するものだった。その中の、疑問だった米国での会社へのLoyaltyについて多くの読書課題と彼らの実体験に基づく討論は大変興味深いものだった。「会社に対するLoyalty(忠節)とは、会社に対し怖れ愛されようと自分の全てを捧げ盡すのではなく、ある時には会社を自分のdevelopment の vehicle として活用し、それで自分を成長させ、その成長した自分でまた会社や広く社会に貢献することが大事だ」と私には理解できた。また、転職は「修得し得た以上にその会社への貢献がなされており、本人が更に能力を伸ばせる機会があれば転職し、転職先の会社を通じ社会により多く貢献することで意義がある」という。その時は、社会風土が異なる安定経済下の米国での考え方として理解できた。そのほかBerkeleyでの修学経験からは以降の仕事や人生上の岐路で重要な示唆が得られた。 転職の決断もその好例の一つだ。
   月日が経ち1986年の秋に関西の大学で情報処理担当の教員募集があり、実務経験と論文数編のある適任者の紹介を依頼された。私の部署には当時何人もの適任対象者がいて、試みに大学への転職について幾人かに一般論として訊いたが、転職には否定的な雰囲気だった。私自身も会社からは留学やその後の仕事面で恩恵を受け、それをこれから返すか考え以外はなかった。でも、修士号と実務経験があり論文も数編書いている自分も有資格だろうかとふと訊ねてみると、「その地位での転職は考えられないが資格は充分ある」という。一瞬BerkeleyでのLoyalty 論が脳裏を横切った。自分は急成長期に導入された転炉・連続鋳造など鉄鋼製造の新技術と急速なコンピュータ利用技術を組み合わせた新製鐵所建設に参画できた。これは、会社あったればこそで自分だけでは絶対に不可能な革新的な「攻め」の経験だった。国内での建設が一段落し、その経験を欧米や韓国・中国などでの製鐵所運運営の技術移転に活かせた。その後は全社内で未開発の大型プロジェクト開発を担当し、会社への貢献は一応できたと思えた。でも、低成長下では「守り」が重要で「攻め」での貢献場面は少なく、会社に居座ることでの意義や自信も疑問に思え始めた。一方で、大学での学生の育成では新しい人生への「攻め」で海外も含めた経験を充分に活かせると思えた。永年苦楽を共にした人たちとの別れは辛く大いに迷ったが、当時はまだ珍しかった早期退職を思い切って選び驚かれた。その後十年ほどで時代が急変し、私が在籍した情報システムの部門からだけでも10名近くの後輩の大学教授が生まれた。
   転職をめぐる社会風土は時代ほどに急変したとは思えない。1992年から客員研究員として在籍したドラッカーセンター大学院で学ぶ社会人との会話で日米の社会風土の相違を明確に感じた。日本では所属する社名はいうがそこで何担当なのかは訊かない限る言及しない。それに比し彼らは「自分はxxの仕事をしている」と担当は紹介はするが、「勤務の会社は?」と訊くとはじめて "with xx company"と社名をいう。一人などは「自分は会計が専門で、その分野の製造、流通、商社の各業種の会社を計画的に転職した。いまは銀行で金融分野を担当し、会計分野での博士号取得と各業種の会計に通暁した専門家になるのが夢だ」と語った。これは極端だが、米国では会社を自分の能力育成の場と考え、育成されたことに見合う会社への貢献がなされたら、その能力を活かすべく転職し更に高いレベルでの貢献に高めるというBerkeleyでの考え方だった。これとても昔のことで、担当したゼミ卒業生の昨今の話では、社会風土も時代と共に変わりつつあるように思える。
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