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タバコ雑感 【この頃思うこと-8-】 [この頃思うこと]

タバコ雑感  【この頃思うこと-8-】
  近頃は禁煙場所がやたらと増え、愛煙者にとっては不便極まりないだろう。しかし、嫌煙者にはタバコの煙と無縁となれて喜ばしい反面、その臭いに敏感となり過ぎているようにも思える。
  先ごろ同年配者20名弱の会合に出席した。どうした弾みか話題がタバコになり「いまも喫煙している人」の質問には数人が「喫煙習慣がなかった人」に三人ほどが挙手した。
   人生では何が幸運になるのかは分からない。私も大学へ入り、人並みに吸えるようになって、タバコ屋で一番手前にあったタバコを一箱購入し、友人に倣(なら)って一息吸ってみた。そのまずかったこと!。その箱ごと友人に譲ると、彼は迷惑そうに「Golden Bat などと安物を買うからだ」と笑う。ならばと、彼のを一本貰って吸った。少しは軽い気がしたが不味さに変わりはなかった。このことで私のタバコへの興味は以降全く失せた。
  3年の春に大学の近くに山手YMCA学生寮ができた。禁酒禁煙なので敬遠する者や入寮後に苦労する者もいたようだ。しかし生来の下戸で、タバコともその一件で疎遠になった私は、この条件には何の不自由も感じることなく2年間の寮生活が楽しめた。
  しかし、その私も何故か葉巻を横で人が吸う香りだけは好きだった。留学した大学院では男の子が生まれると葉巻を一本ずつ友人に配る習慣があり、貰った私はそれに火を付けて香りを嗅ぎ、ついでに少しだけ煙の香りも味わってみよう軽く吸った。だが、慣れないことでスット肺まで吸い込んでしまい、一瞬クラッとひっくり返りそうになった。それ以来タバコとは絶縁となった。
  入社後7年ほど経った頃、同じ職場に無類の愛煙者で両切りのピースを挟んだ指が黄色くなるまで日に40本ほども吸う後輩K君がいた。彼は時々家に泊まったが、子供たちから「歯磨きのおじさん」と呼ばれていた。それは、彼がスモカとか言う喫煙者用の歯磨き粉と歯ブラシを我が家に置いていたからだ。その彼がある日、タバコ一箱の中央に金色のコウモリの絵が、その上に大きな字でGolden Bat その下に少し小さな字で - Sweet and Mild - とあるのを見せて「これは品質に当たり外れはあるが、当たればピースより本当のタバコの味がする。今日は当たりだった」と言った。その後で「ローマ字読みで上に書いてあるGolden Bat を後ろから左に読み、続いて下のSweetからMild を右読みしてください」と言う。無理して「タブンドログ? 後は英語読み?」と答えると「いや、その気で読めば、面白いことに『多分いいだろうが、吸うと参るぞ』と読めるのですよ」と言う。「なるほど、そう読める!」。いまウェブで調べたが、それに類する書き込みは皆無なので、これは彼らしい独創だったのだろう。
  そのずっと後、また、K君と同じ事務所の1メートルほど離れた座席となった。彼は相変わらず本当にウマそうにスパスパと両切りのピース缶を二日もかからず空にし、そのたなびく煙で、帰宅後の背広やシャツにまでその臭いが染み込むほどだった。その頃には想像もつかなかったが、いまでは、電車やオフィス、それに道路ですら禁煙となり喫煙者は肩身が狭い社会になっている。いま彼と会って「吸って参ったぞ」とからかいたいのだが、彼はこう禁煙がうるさくなる前に、「こんな不自由な所には住めないよ」とばかりこの世を去ってしまっていた。寂しいことだ。
  個人的には、父と長兄は永年の喫煙が災いし、私の年齢ではすでに肺気腫で苦しそうだった。私は、最初に「まずい」タバコの Golden But と出会ったばかりの「幸運」に、タバコを「吸って参る」ことなく、また、喫煙箇所で「不便極まりない」こともなくいまの生活が営(いとな)めている。

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