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キーボードと英文タイプライタ【この頃思うこと-28-】 [この頃思うこと]

キーボードと英文タイプライタ【この頃思うこと-28-】
 ワープロと昔の英文タイプライター(以降タイプと略称)のキーボードとでは、文字配置は同じだがその使い勝手、例えば誤打の修正処理、改行位置決め、改行、複写処理などでは雲泥の差があり全く「似て非」なものに改良されている。その違いはソフト(電子式)対応かハード(機械式)対応かの違いにある。つい30年以前までは英文タイプ使用者だった私ですら、ワープロに使い慣れて普段それを意識しないほどだから、いまの多くの人にはその頃の不便さとその改良点などは想像も付かないのは当然だ。その意味で当時は少数派だった英文タイプの使用者としてその幾つかを思いだしてみよう。
 ワープロ出現以前は、英文キーボードの使用の多くは「英文タイピスト」と称する多くは女性の専門職者だったが、私はその資格準備の教室のあるYMCAへ留学準備の一環としてブラインドタッチに慣れるために通った。教室では、30cm四方ほどの黒いタイプマシンが約20台あり若い女性たちが「ポンポン・チン・ガラガラ」と音をたて奮闘していた。私は資格に最低限要求される1分間2000タッチが打てるようになった一か月で終えたが、タイピスト希望者はその打鍵速度に加え、誤りなく、均一の印字濃淡、英文記述のルール遵守、などの厳しい資格検定の準備に長期間の学修と訓練を要したようだ。
 それは英文タイプが機械式だったからだ。誤打をすると、打鍵を止め紙ホルダを上げ消しゴムで本文とカーボンコピーの2箇所の文字を消し紙ホルダを下げて一字分戻して打ち直す必要があり、その時間と手間は大変だった。キーボードのそれぞれのキーと連結した細長い棒の先にそのキーに対応した英字や記号の刻字体がある。キーを叩くと一体の長い棒が上方に飛び上がり紙の前にある黒リボン上を打ち紙に刻字する仕組みなので、打鍵の強弱が印字の濃淡となり小指と人差し指では力の加減が必要だ。「ポンポン」の音の打鍵を続け、セットした行の最後の余り字数に達すると「チン」と鳴り、そこで残りスペースと次の字数で改行の仕方を考え、改行は手で「ガラガラ」と音を立てて紙をセットごと動かす。それの20台分が前述の教室で聞こえた賑やかな音だ。誤って同時に二本同時に打鍵するとその二本の棒が絡みあい両手で元に戻すのに手間取る。キーの配置がいまでも使いにくいQWERT配列なのは、その絡みの少ない配列がパソコンになって絡みとは無関係になっても配列を換えるには普及し過ぎたのでそのまま残っていると言う説さえある。
 このように考えると、英文タイピストが学び取得した技術は英文タイプと言う機械の使いづらさを補うもので、面倒だった誤字訂正、印字の濃淡、改行準備とその実行などはいまのパソコンではすべてソフトウェアで解決し、ただ打鍵しさえできれば誰でもすぐ習熟できるようになっていると理解できる。英文タイピストの資格試験がなくなった訳だ。これは身近に思いついた一例だが、世の中には、いまは当然と思われるが半世紀前には思いもよらなかったものに溢れていることに気付くようになったこの頃だ。
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