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日本平の向こう(東)側【この頃思うこと-60-】 [この頃思うこと]


日本平の向こう(東)側【この頃思うこと-60-】

 日本平は、静岡と清水の間の約東西6km南北4km高さ307mの、南端の東照宮近くは崖崩れもあるが、総じてなだらかな丘陵だ。戦中は小学校で日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が東征時に「草薙の剣」で災難を防ぎすぐ南の日本平の頂上でその絶景に見入ったと習った伝説の地で、晴天時の絶景を除けばありふれた低いただの丘陵だ。
 最近はパソコン使用が減り部屋から風景を眺めることが多い。高層南面ガラス戸の東から日本平の西側全貌と眼下の市街地に続き目を右に転じると4km先に海岸と海、それがさらに焼津の向こうまで続く。約5km先の丘陵頂上にはアンテナと日本平ホテルがえる。時折は最上階で北東の富士山、北の南アルプスの銀嶺、西の静岡市街など眺める。

 3kmほど先の丘陵は年中緑豊かな景色を提供してくれる。その麓を西方へ抜ける東名高速の小さな車を東西に目で追うのも面白い。しかしその丘陵が向こう側の伊豆半島を隠し、一帯が駿河湾内ではなく太平洋に面しているかのように錯覚させる。バスに30分ほどの日本平頂上からは、快晴だと眼下に三保の松原や清水の港、その先を駿河湾沿いに目を東へ転じると興津や沼津海岸、さらに東南に戸田や土肥そして伊豆半島が果て南の水平線まで駿河湾一帯が一望に見渡せる壮大なスケールの感嘆に値する絶景が楽しめる「はず」だ。「はず」というのは、少しの雲でも全くその絶景は分断され曇天ではただの低い丘からの眺望に過ぎなくなるからだ。夏場は月の半分以下、冬場でも三分の一ほどは雲がかかって絶景の全貌は望めず、来客の案内で瞬時でも富士山周辺に雲一つないのに遭遇したことは1回くらいだ。数年前に頂上の日本平ホテルが改築を終えその部屋一杯のガラス戸越しの景色は絶景だと聞いてはいたが、好天を見越し予約しても雲が少しでも出ると絶景は消え失せて景色は保証の限りではない。
 雲一つない好天の日にはその向こう(東)側を想像し一度はそんな日に日本平ホテルに泊まり長時間かけて瞬時でも雲のない絶景に遭遇したいとはかねがね思っていた。3月9日に珍しく雲一つなく丘陵を朝日が上り天気予報では翌日も晴天とある。多分ホテルは満室だろうと駄目元で電話をすると何と空室があった。少し贅沢だったが予約して近くを通るホテルのバスに乗り2時半に着いた。快晴なのにそれでも雲は富士山の頂上付近のみに少し漂っていた。ベッドに横たわったり椅子にゆったり座ったりで雲が消えるのを待ったが残念ながら富士山の手前の雲は位置を変えても切れることがなかった。それでも丘陵の西側とは全く異質の、部屋一面の壮大な昼夕朝の景色を二日がかりで楽しんだ。駄文では表現
できず写真でも充分には伝わらないが紹介する。
                  

                    
  富士と清水市街  駿河湾と伊豆半島    夕景

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健康寿命とホメオスタシス【この頃思うこと-59-】 [この頃思うこと]

健康寿命とホメオスタシス【この頃思うこと-59-】
 昨年11月に半月ほど入院する羽目になった。退院して驚いたことに足・腹部の筋肉・脂肪がげっそりと落ちたことだ。一瞬「加齢のせい?」と感じたがすぐに思い出した似た状況は、中学2年の時左鎖骨を斜骨折し整骨院の指導による自宅治癒で1か月ほど寝ていた後のことだった。足が棒のように細くなり歩くのに数日を要し、さらに全く固定化して動かさなかった左腕を曲げ指先と肩がつくまで毎日強制的なリハビリに1ケ月ほどを要したことだった。
 入院前まで毎日5000歩近く歩いていたので歩行回復はすぐにできたが、ヨガに加え少しずつ日課にしていた腰まわりや腹筋・背筋などの入院前の状態回復までは自信がなかった。しかし「その人の身体成長期に鍛えた筋肉は加齢しても使えばその60%は戻る」との説を読み、40歳から60歳代までに数回試みて実証済みだったので、80歳になって久しくご無沙汰していたぶら下がり器で、三浦雄一郎氏の例も思いながら。また懸垂を試みた。最初は身体が全く持ち上がらなかったが1週間ほど毎日続けたら1回、半月ほどでそれが4回までになり、平行棒の静的な胸筋・腹筋・背筋運動も退院前には何とかできるほどになっていた。そこで、加齢のしかも病後でいまさら無理かとは思ったが退院後に毎日少しずつ実行し続けたら2週間以上を要して入院前の状態までは戻ったのには我ながら驚いていた。同時に、72歳で学生に混じり半日のスキーレッスンを受けたがその時初めて使った感覚の腿の筋肉は半年たった後も痛かったのも思い出し、今回の成長期に鍛えた筋肉での感覚とは全くの違うとも思った。手の指の付け根はいまでも鉄棒の時のタコの痕跡があり刺激すると盛り上がる。頭のなかでは風化している65年も昔のことを身体の各部分はまだ確実に覚えそれに備えているようだ。
 平均寿命に加え最近は健康寿命(健康上で日常生活の制限なしで生活できる期間)が話題となっている。友人からの情報でWHOの2016年の資料で日本の平均健康寿命が74.9歳、平均寿命が83.7で共に先進7か国では1位でありその差8.8歳でも最短であると知った。平均寿命を超えてまで健康寿命でいられることに有り難みを痛感する。
 自動制御工学の究極の手本は人体のホメオスタシス(生体恒常性―体温・血圧・血糖値などー)であり旧くは新約聖書(コリント12章12節)にもあるとおり身体は多くの部分からなり、それらは。病原体への免疫力も含め各部分には独自の治癒・現状維持力が自立的に働いている。生きている限り、加齢しても若い時に比し遅くまた程度の差はあろうが、治癒・維持力は充分に残っているようだ。不調を訴えると「年齢相応で」と医者に言われることが多い。今回も歳が歳だからと入院以前までの体調復帰は諦めかけていたが、身体の各部はまだ自立的復元力が残っているはずだと実行し、それが一応は実証できた。身体は効率良くできていて使用しない部分は無駄として再生しないが、加齢するとそれが顕著にはなるものの現存しているのは間違いない。
 確かに85歳も近くなると加齢は加速度的に進んでいるようだし、いつまで続くかは分からぬが、無意識で働いている各部分での免疫力・現状維努力に報いるためにも身体が許す間は意識して昔鍛えた体力の何分の一かの維持には努めようと思っている。その気力が健康寿命を保つには重要なのかも知れない。
 

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「苔(こけ)」について【この頃思うこと-58-】 [この頃思うこと]



苔(こけ)」について【この頃思うこと-58-】

 知人から自宅を売却するのでとその立ち会いを依頼され、その席上で売却先の人が「苔」の研究者であることを知った。日頃興味を持ちながら苔について何を質問するかその糸口すら見つからぬほどの無知さに気付き、分かり易い入門書の紹介を受けるのがやっとだった。
 早速その書物をWEBで調べると購入するには結構な値段と大きさなので図書館で借りようと探すと遠方まで借りに行く必要があることが分かった。常識的なことを知りたいだけなので近くの本屋で秋山弘之著「苔のはなし」と言う中公新書を見つけ早速読んだ。
 米・伊・豪・NZ・東南亜など一か月以上滞在した経験からすれば、日本の天候は総じて湿気が多く、その文化も異常なほど苔と深い関わりがあるように感じてはいたが、苔については殆ど無知に近くその本から多くが学べた。企業勤務の社宅住まいの頃はその機会もなかったが、大学へ移り一軒家で小さな庭を持って苔をそのあちこちで見かけるようになった。近くでよく観察すると、「もし自分がそれなりに小さくその中に入れるならば、大きな杉の様な苔が林立したなかからそれらを見上げているのだろう」と想像をたくましくしたりしていたことを思い出した。
 しかし、その本によると苔の種類は未発見も含めてとてつもなく多く、その恐るべき環境適応能力で地球上に極寒の地から深海まで、また短命なものから長命なものまで存在すること、根もなく胞子で増えること、茎に見える維管束には水や栄養を運ぶ管がないこと、など我々が日常接する大きな植物に持つ常識とは異なる次元のことを知った。「苔」は水分がなければ生存できないが、全くの乾燥環境におかれてもそれに少しでも水分を与えると復活することなどその生命力に驚くことも多く、いままでの無関心さを恥ずかしくさえ思った。

 日本以外で長期間住んだ南伊は降雨が年に数えるほどの乾燥地帯で苔とは無縁に近かったし、米国では気持ちの余裕もなく苔には思い及ばなかったが、何度も訪問した英・独・北欧など西欧にも森林の中には確かに苔はあったような気がする。インドネシアでは1か月近く密林と隣り合わせで住んでいたのだから当然見たであろうが暑さと生活環境の違いから全く思いも付かなかった。その点日本は湿気が多く四季がはっきりしていて、梅雨時には少し日陰に行くと多種な苔が自然に目に付く。苔寺など有名な場所もあるし国歌の歌詞にも見え、苔に関する気持ちが諸外国とは違い特別のものがあるようにも思えてはいた。この本でも「苔と日本人」に関する6ページ強の記述があり「詫び・寂び」文化、とくに和歌や日本の古典での扱いなど日本人としての「苔」との関わりの深さを改めて知り、この歳になって、私的な感情だけでなく「苔」が日本文化と深く長い間の関わりがあったことと、その一部分にでも気付かされたことをありがたく思えた。




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